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トリブラに愛を注ぎつつ、私的おすすめ本の紹介や、読んだ本にまつわるssなど、思いつくままに・・・
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・・・しましたね!
表紙がトリブラなのにびっくりしてしまいました。
わ~THORES柴本さんの久々のアベルだっ☆と、軽くはしゃいだり。
内容は、どうやらトリブラがアニメ化したときの特集雑誌に載った短編のようで。
「~じゃ」口調大好きの安井健太郎さんが書かれた、アストさんの外伝ですね。懐かしい!

吉田先生が亡くなられてから、もう何年?
実は、私がトリブラを知ったのは、先生が亡くなられてからなのですが;
今でもトリブラ大好きなのは変わりません。
なので、こうして、店頭でアベルの姿が並ぶというのは、特別の感慨があったりします。

・・・そこで!
いろいろとトリブラに思いをはせた結果、こんなものを書いてしまいました;
遠い、遠い、未来のトリブラの話です。
CANONまで辿り着いていない方は、もしかすると、ネタバレになってしまうかもしれませんので、どうかご注意ください;

では、以下、トリブラ模造SSです。

大災厄(アルマゲドン)で文明が滅んだ遠未来。
異種知性体・吸血鬼と人類の闘争が続く暗黒時代は、二者の直接決の末にようやく幕を閉じた。
今や人類の宗主とも言うべき教皇庁(ヴァチカン)は、
新教皇アントニウスⅦ世のもとで、吸血鬼たちの巣窟・真人類帝国の皇帝ミルカ・フォルトゥナと和約を結ぶにいたる。
かくして世界は収束に向けて動き出していた。その時代に――
ヴェネチアで起きた奇妙な連続殺人事件を調査するため、
国務聖省長官カテリーナ・スフォルツァは、皇帝ミルカに捜査協力を要請する。
そして、ミルカより指令を受けた直轄監察官(カマラーシュ)
アスタローシェ・アスランは、カテリーナが派遣した国務聖省特務分室、
通称“
Ax”の派遣執行官と、ヴェネチアで落ち合うことになったが――
 
                   †
 
千を越える仮面の群れが、松明を手に行進してゆく。
まさに魑魅魍魎の跋扈とは、このことを言うのか。日も沈みかけた海辺の広場では、奇妙な集団が、とどまることなく流れている。
彼らの背後に擁するは、煌びやかな大聖堂(パラッツォ)総督宮殿(バジリカ)のたたずまい。
“ヴェネチアの顔”と称されるほどの豪華絢爛ぶりは、かの“
災厄(アルマゲドン)”の再来によって、一度はその光を失ったものの、今では再建され、かつての美しさを取り戻している。
世界の立ち直るは早い。
それは、どこにいても同じということか。
「・・・・・・いや」
このとき、真人類帝国貴族、キエフ侯爵アスタローシェ・アスランの頭をよぎったのは、もっと別な感慨だった。
「かの教皇庁の膝元にあり、その加護も深いこの地だからこそ、の結果であろうな」
それは、教皇庁のことをよく知るアストだからこその発言であった。
以前の彼女であれば、この“ヴェネチアの謝肉祭”にも、仮面の群れにも、全く興味などなかったし、むしろ、嫌悪感すらあった。所詮は、卑しき短生種(テラン)の作り出した賜物。下品で、卑賤で、悪趣味な代物だった。
その考えが変わったのは、同じこのヴェネチアの地で、一人の男と知り合ってからだ。
――アベル・ナイトロード。
おさまりの悪い銀髪に、牛乳瓶の底みたいな丸眼鏡をかけた、情けない顔の男。
出会った頃の彼は、貧乏くさい黒の僧衣と、擦り切れたケープを身にまとい、典型的な巡回神父の出で立ちをしていた。
しかし、アストは知っている。彼が、ただの巡回神父などではないことを。
彼が、本当はとても強くて、たくましくて、そして・・・・・悲しいほど優しい者であることを。
彼と別れるとき、アストは、純粋に寂しいと思った。この短生種(テラン)は、自分よりもずっと早くに死ぬ。きっと、アストが瞬きをしているうちに、逝ってしまうだろう。
もう、二度と会うことなどない。そうわかっていたのに、アストは、あと50年ほどで土に還ってしまうその顔を、目に焼き付けたのだった。
そして。
それから、何年かが過ぎ、アストは、もう会えないと思っていたはずのその男と、再び会うことになっていた。
初めて会ったのと同じ、このヴェネチアの地で――
「・・・・・それにしても遅いぞ、あの馬鹿(ドビトーク)は。定刻はとうに過ぎておるというに、どこで何をやっておるのじゃ」
アストが、いっこうに姿を見せない相手に、苛立ちをつのらせていたとき。
男女の言い争う声が聞こえてきた。どうやら、嫌がる女に、男がしつこく言い寄っているようだ。
(・・・・・・この光景、どこかで見たような・・・・・・はて)
アストが思い出そうと頭をひねっていると。
「あのぉ、お取り込み中にすみませんが」
聞き覚えのある声が、背後からアストの耳を打った。
「ちょっといいですか?えっと、聖マルコ広場って、この道でいいんですよね?」
声の主たる背の高い神父は、はっとするアストの横を通りすぎて、言い争う男女の前に立ちはだかった。
「はァ?」
あらゆる意味でトンチンカンな神父の問い掛けに、男の方が声を荒げた。
おそらく、「馬鹿かコイツは」とでも思ったのだろう。何しろ、神父のいるこの場所こそが聖マルコ広場であったし、周囲にたくさん人がいる中で、あえて自分達に話しかけてくるなど、よほどの大ボケか、正義の味方気取りの阿呆でしかない。
そしてどうやら、神父は後者を気取りたいらしかった。
「てめぇ、誰に話し掛けてんだ。オレァ今、何してるかわかってるよな、ええ?」
男が神父の胸倉に掴みかかってくると、神父は目をそらして、うそぶいた。
「え~私はただ道を聞こうと思っただけで・・・・・・そ、そうだ、お嬢さん、今のうちにお逃げなさい――あら?」
しかしむろん、男が神父に掴みかかったスキを逃さず、女性の姿ははるか広場の人込みに消えようとしていたのであった。
「あらー・・・・・・この展開、どこかで見たような・・・・・」
神父が、引きつった笑みを浮かべていると、男が殺気を増して神父にすごんできた。
「ええっと・・・・・・まずは落ち着きましょう。話せばわかります!主もおっしゃられたではありませんか。“互いに偲びあいなさい。責めるべきことを赦しあい――”」
「ぶっ殺される覚悟は、できてんだろうな?」
神父の顔は、もはや血の気を通り越して真っ白だ。その情けない顔をみて、アストは思った。あぁ、全く同じだ。あの時と。出会った頃と。
(・・・・・・やはりだめじゃな、こやつは)
呆れてため息をつくと、アストは音もなく走り始めた。軽い助走ののち、華麗な跳躍とともに、二人の間に割って入る。
まるでサーカスの踊り子のごとく優雅な着地を決めると、アストは、男の方をキッと睨みつけた。
「すまんが、この男はこれでも我が相棒でな。余計な手出しは無用じゃ」
「あ、アストさぁ~ん」
救世主のごとく登場した美女に、神父――アベルは飛び付いた。しなやかに伸びた彼女の腕に小犬のごとくしがみつくと、彼女を楯にするかのごとく、彼女の後ろに回り込んだ。
「まったく。情けない声を出しておらんで、少しはマシな顔をせんか。せっかく余が、はるばる帝国から出向いてきてやったというのに」
「そ、そーだっ、そこのあなた!この方は、アスタローシェ・アスランさんといってですねぇ、かの真人類帝国のお貴族さんなんですよっ。そりゃあもうお強くって、私なんて、何回足蹴にされたことか・・・・・・!ああでもですね、乱暴で言葉はキツいですけど、根はいい人で・・・・・・てあれ?」
まるで自分事のように胸を反らしていたアベルは、先刻まで勢いづいていた男が、すっかり硬直していることを気付いた。
「あれ、どうかしました?そんな、この世の終わりみたいな真っ青な顔して。いやだなぁ、もう大災厄は終わったじゃないですか~。何を、そんなに怖がることが・・・・・・」
「ばっ、ヴァンパイアだとっ?…!ぎゃあああっ、ちちち、近づくなこの化け物!こっ、殺されるッ!!」
男は、悲鳴を上げながら、瞬く間に広場を走り去っていってしまった。
「む、失礼な!アストさんは、そんな人じゃないですよ!だいたい、もうヴァンパイアは私達の敵じゃないですし、新人類帝国と教皇庁では、正式に和平協定が成立して・・・・・・って、全然きいてないですね」
男の姿は、既に2人の視界からは消え去っている。どうやら逃げ足の速さでは、先刻の女性といい勝負のようだ。
「全く、あの方もいろいろひどいですね。気にすることないですよ、アストさん」
「あぁ。相変わらず変わっておらんな、アベル」
「アストさんも」
「元気にしておったか・・・・・・我が“相棒(トヴァラシュ)よ」
「ええ」
静かに、しかし、しっかりと、アベルはうなづいた。




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