トリブラに愛を注ぎつつ、私的おすすめ本の紹介や、読んだ本にまつわるssなど、思いつくままに・・・
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すっかり長くなってしまいました
「落第忍者伊作」、略して「落・伊」
「6人そろえば、怖くない!?の段」の第1回をお送りします。
いよいよ、話も終盤です(たぶん)。
新たなる試練を前にして、6人の本領発揮(???)・・・だとよいのですが
では、よろしければ、以下、おつきあいください。
「落第忍者伊作」、略して「落・伊」
「6人そろえば、怖くない!?の段」の第1回をお送りします。
いよいよ、話も終盤です(たぶん)。
新たなる試練を前にして、6人の本領発揮(???)・・・だとよいのですが
では、よろしければ、以下、おつきあいください。
**************
さて、何はともあれ。
「じゃあ、今度こそ私たちは忍術学園に帰ろうか。学園長先生が、新鮮なお魚をお待ちだ」
「ああ、そうだな」
伊作と留三郎は、そう言って、再び荷車を引き始めた。
「ずいぶんと時間を食っちゃったなぁ」
「ああ。早く帰らないと、日が暮れてしまうぞ・・・」
二人がそんなことを言い合っていると。
「おい、待てソコのガキども」
また、先刻と同じような脅し文句が、背後から聞こえてきた。
しかし、もう二度目のことなので、伊作も留三郎もすぐに驚きはしなかった。むしろ、あきれた様子で。
「あー兵庫水軍のみなさん、山賊ごっこはもう終わりですよー」
「私たち、もう騙されませんからー」
などと、馴れた口調で言ったが――
「はぁ?山賊ごっこ?そりゃあいったい何のことだ。俺たちは、別にガキの遊びのつもりはねぇ。俺たちは、昨夜焼け落ちたあの城のモンだ!」
いつになく凄みのある口調に、いよいよ二人は、気付き始めた。
どうやら、今度は本物の山賊に出会ってしまったらしいことを・・・
「どどど・・・どういうことだろう、とめさぶろー・・・。この人たち、兵庫水軍の人じゃないみたいだよ?」
「そそそ・・・そうだな、伊作。長次ぃ~どういうことだよ、これは?」
留三郎は、こんな場面に来ても相変わらず無愛想な長次に問いかけた。すると。
「・・・どうやら、本物の山賊みたいだ」
それが、彼ら6人にとっての決め手になった!
「ガキども、見たことのない顔だな。この辺のモンじゃねぇのか。こんなところに何しにきやがった」
凄みのあるリアルな山賊の声に、6人は揃って震え上がった。
「「「「「「ひえぇ~」」」」」
「お、俺たちは、兵庫第三共栄丸のところに、新鮮なお魚をもらいに来ただけだよ!」
かろうじて、留三郎がそう強がる。
「ほう。しかし、近くに人気がないところをみると、お前たちだけで来たのか」
「そ、そうだいッ!」
今度は、伊作が力を振り絞って言った。しかし、すぐに傍らの留三郎の叱責が飛ぶ。
「ばかッ伊作ッ!敵に自分の戦力を簡単に明かす奴がどこにいるッ!」
「そ、そっか・・・ごめん、とめさぶろー・・・」
「はぁ。まったく・・・
それで、お前たちの目的はなんだっ!この積み荷か?」
留三郎が力いっぱい叫ぶと、山賊たちは、ふと思案顔になって。
「・・・そうだな。まずは、その積み荷を全部もらおう。そのあとは・・・お前たちの番だ!」
「「「「ひいぃぃぃ~ッ」」」」
迫力のある顔で凄まれ、6人は一斉に震え上がった。
いつもは強がっていて、彼らはまだみんな1年生なのだ。
「さあて、まずは、その積み荷をもらおうか。全員、荷車から離れろ!」
すると、仙蔵と文次郎が顔を見合わせ、小声でうなずきあった。
「・・・ここは、いったんおとなしく言うことを聞いておいた方が、よさそうだな」
「ああ、そうだな・・・」
「やつらは、俺たちが忍者の卵であることを知らない。
そのことを利用して、奴らの不意をつくんだ」
そのことを利用して、奴らの不意をつくんだ」
「ああ。いざとなれば、仙蔵の宝禄火矢を使えばいいしな」
すると、仙蔵が急に言葉を濁した。
「・・・それなんだが。実は、さっきの一個でおしまいなんだ」
「「な、なにーっ!?」」
その発言に、文次郎だけでなく、話をきいていた他の一年生たちも、声を上げた。
「なんでそんな大切なものを、あんなしょーもないことに使ったんだ!」
「仕方なかろう。手が滑ったんだ」
「じゃあ、なんで予備を持ってこないッ!?」
「硝煙蔵から、そう何個も持ち出せるわけがなかろう」
ここにきても、やはり冷静な仙蔵は、冷静に自分のミスを分析した。もっとも、分析されたところで、何の役にも立たなかったが。
「ガキども、そんなところでなにをごちゃごちゃ言ってやがる」
「モタモタしてないで、さっさとしろ!」
山賊たちがせかしてきたので、1年生たちは、しぶしぶ荷車から離れるしかなかった。
何の策も立てられないままに・・・
「よし。お前たちはそこに一列に並べ。
いいか、変な真似はするなよ。ガキが何人飛びかかってきたところで、城守りの落ち武者に勝てるはずはねぇ。無駄な抵抗はやめるこった」
山賊たちは、6人を道の真ん中に一列に並ばせると、全員の手足を縄で縛った。強気な文次郎や留三郎は、果敢にも抵抗を試みたが、もちろん大人の強力に勝てるはずもなく、空しい抵抗に終わった。
地面に座らされると、伊作が、不安そうに留三郎に問いかけてきた。
「ねぇ、とめさぶろー。私たちこれからどうなっちゃうんだろう?」
「俺にきくなよ。わかるわけないって」
全員を縛り終えると、山賊のお頭らしき人物が、6人をまるで品定めでもするかのように順に見て回り始めた。
「・・・ふむ。どうしてやろうか。見たところ全員農民や商人の出といったか?」
「お頭、こいつなんてどうですかね?貴族のボンボンみたいな顔してますけど」
山賊の一人が、仙蔵を指さして言った。
「うむ、確かに、なかなかに整った顔をしているし、白い肌と黒い髪はいかにも苦労知らずの坊ちゃんといった風だ」
すると、傍らで伊作と留三郎がこっそり囁きあう。
「いわれてるなー仙蔵」
「確かに、仙蔵って、いかにもお坊ちゃんって感じだもんね」
「――そこ、きこえているぞ」
仙蔵が、少しいらだちながら二人をたしなめる。
「それで言うなら、こっちのガキもそれっぽくないですか?いかにも世間知らずの感じが出てますぜ」
「ふむ、確かに、いかにもアホでお人よしそうなとぼけ顔をしているな」
今度は、伊作を指さして山賊が言った。
「・・・お前だって、随分といわれているようじゃないか、伊作」
仕返しとばかりに、仙蔵が言い返す。
「あとは、どうですかね。みんなそこらの平民のガキですかね?」
「ううむ、そうだな・・・」
と、そこで、山賊のお頭の目が、ある人物の前で止まった。
「・・・お前・・・」
お頭が、その少年をまっすぐに見つめて問う。なぜか、肩が小刻みに震えているようだ。
もしや、子供の中に、危険人物でも紛れ込んでいたか!?部下たちが、緊張した面持ちにお頭の言動を見守っていると・・・
「・・・お前・・・本当に・・・こいつらと同じ、ガキなのか?」
ばびゅーんっ!
あまりのボケように、部下たちは一斉にコケた。
そう、お頭が目を留めた人物、彼こそは、1年ろ組の中在家長次だった。
長次は、1年生ながらにすでに大人顔負けのフケ顔をしていて、とても10歳には見えないのだ。
「お、お頭~いいじゃないスか。ガキがいくらフケ顔をしていようと、ガキはガキですぜ?」
「いや、絶対にこいつだけはおかしいッ!もしかすると、こいつはガキのフリをして俺たちを狩りに来た、敵の城のスパイかもしれんッ!」
「スパイが、なんでガキに交じって魚とりに来るんスか」
「いやいやッ!だがこの男の顔を見ろ!これが、本当に子供でいいのか!?」
随分な言われようである。
普段から気にしている自分のフケ顔をさんざんに言われ、中在家長次はすっかりいじけてしまった。
「わっ、わたし、本当にまだ10歳なのに・・・10歳なのに・・・」
「ちょ、長次・・・落ちつけよ・・・」
「そうだよ、長次は、まだれっきとした1年生だよ・・・」
伊作と留三郎が必死に励まそうとするが、気落ちした長次には、聞こえていないようだった。
「さて。どうしますか、お頭?」
「そうだな。全員、脅してもそう金が搾りとれるようなメンツとは思えねぇ。ここでやっちまうか」
「そうしますか」
「じゃあ、そういうことで、残念だったな、ガキども」
意見がまとまったらしい山賊たちは、下卑た笑い声をあげながら、6人に襲いかかってきた。
今度こそ、絶体絶命だ!
**************
「6人そろえば、怖くない!?の段」第1回でした。
ここまでおつきあいいただき、ありがとうございました!
今回のお話。
山賊のお頭が、1年生の長次に向って、
「・・・お前・・・本当に・・・こいつらと同じ、ガキなのか?」
長次「わっ、わたし、本当にまだ10歳なのに・・・10歳なのに・・・」
留三郎「ちょ、長次・・・落ちつけよ・・・」
伊作「そうだよ、長次は、まだれっきとした1年生だよ・・・」
伊作と留三郎が必死に励まそうとするが、気落ちした長次には、聞こえていないようだった。
・・・長次、撃沈!
個人的に、結構好きな場面です(苦笑
・・・長次、撃沈!
個人的に、結構好きな場面です(苦笑
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