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トリブラに愛を注ぎつつ、私的おすすめ本の紹介や、読んだ本にまつわるssなど、思いつくままに・・・
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なんかこんなところまで続いちゃってます
落第忍者伊作」、略して「落・伊」

「行きはよいよい帰りが怖いの段」の第2回をお送りします。

今回は、いよいよ1年生組が全員集合・・・のはず。

では、よろしければ、以下、おつきあいください。




 

**************

――と、その時。
 
「まて。お前たちの相手なら、この私がしてやろう」
 
 二人の背後で、伊作と留三郎には聞き覚えのある声がした。
「ああ?誰だ?お前たちは?」
 山賊たちが、不機嫌そうに振り返ると、そこには、伊作と留三郎と同じくらいの背恰好をした二人の少年が立っていた。
「1年い組の立花仙蔵に潮江文次郎!」
「どうして君たちがここに?」
 驚いて、伊作と留三郎が声を上げる。
 二人の姿を横目で見ると、仙蔵は余裕綽々の表情で、山賊に向かってビシッと指を突きつけた。
「私たちは、実地訓練中のただの通りすがりの子供たちだ。その二人は、一応私たちとかかわりのある人物なので、助ける義務がある」
「はぁ?何をわけのわからないことを言ってやがる。とにかく、こいつらもまとめてやっちまえ!」
「おう!」
「おっと、あまり私に近づかないほうがいいぞ」
 そう言うと、仙蔵は、どこからともなく宝禄火矢を取り出した。導火線に平然と火を近づけながら、ニヤリと笑って言う。
「これは、硝煙蔵から借りてきた宝禄火矢だ。いま私に近づけば、これを爆発させるぞ。それでもいいのかな?」
「あッ、アニキぃ。あいつ、ガキのくせにあんな危ないモンもってやがるぜ」
「ハッ、ハッタリに決まってるさッ!気にせずやれッ!」
「へい!」
 二人の男が、仙蔵に襲いかかろうとした、その瞬間・・・!
 ドサッ!
 大きな音が響き、男たちが一斉に穴の中に落ちた。
「・・・よし。うまくいったな」
 穴の中で倒れている男たちの姿を確認すると、仙蔵は、まるで実験に成功した科学者のような顔をして言った。
「へぇ~すごいなぁ仙蔵は」
 仙蔵の後ろから穴の中を覗き込んで、伊作が言った。ほめられた仙蔵は、まんざらでもない様子で、胸を張る。
「まあな。これくらい、大したことではない」
 
「――仙蔵は、“い組一冷静な男”だからな。お前たちが山賊に囲まれている間に、お前たちを助ける計画をたてて、俺が穴を掘ったんだ。少しは感謝しろよ」
 今度は後ろから、別の声がした。振り返ってみるとそこには、なぜかツルハシをもった文次郎が立っている。ちなみに、なぜ、どこからツルハシをとってきたのかは、聞かないのが落・伊のお約束である。
「さて、あとはこの宝禄火矢でとどめをさすとするか」
 仙蔵が、導火線に火をつけようとすると。
 
まて、仙蔵
 
 また背後で声がした。
 一同が揃って振り返ると、そこに立っていたのは・・・
「1年ろ組の中在家長次に、七松小平太!」
 そう、1年ろ組の正反対な二人組、無愛想な表情の長次と、対称的に明るい笑顔の小平太であった。
「なんでお前たちまでここに?」
 すると、長次が小声で何かを話し始めた。
「ぼそぼそ」
 しかし、彼の声はあまりに小さいので、誰にも聞こえない。
「え?なんだって?」
 すると、隣で立っていた小平太が、通訳を始めた。
「ぼそぼそ」
「・・・なになに、その人たちは、本当は兵庫水軍の海賊さんたちで、学園長先生に頼まれて、山賊のフリをしているだけだって?」
 思いがけない長次の言葉に、一同は唖然とした。
「そ、そうだったのか・・・」
「どうりで、山賊なのに海賊みたいな恰好をしているわけだ」
「でも、どうして海賊さんたちが、わざわざそんなことを?」
 すると、長次がまた呟き始める。
「ぼそぼそ」
「・・・普段から何かと問題を引き起こしている伊作と留三郎に、山賊退治を通じて、力を合わせることの大切さを学んでほしいから・・・だってさ」
 その言葉に、伊作と留三郎は気落ちして倒れこんだ。
「なんだよ~だったら、最初から仕組まれてたってことか」
「でもまぁ、よかったじゃないか留三郎。本当の山賊だったら、たぶん私たち、無事に忍術学園に帰れてなかったよ」
「まぁ、確かにそうだけどさぁ」
 すっかり気の抜けた伊作と留三郎の横で、仙蔵が、不満そうに言った。
「何だ、そんな茶番だったとは、まったくつまらん」
 今度は、まるで実験結果に不満な科学者のように、仙蔵は、手にしたものを放り投げた。
 それをみて、最初に表情をサッと青ざめたのは文次郎だった。
「・・・おい、仙蔵、お前いま、なに投げた?」
「なにって、手に持ってた宝禄火矢を・・・って、うわっ!?」
仙蔵の投げた宝禄火矢は、空中で引火し、そのまま海賊たちの落ちた穴の中へ急降下していった。
 ・・・そして。
 
どむっ!!
 穴の中で爆発した宝禄火矢は、「ギャーッ!」といういくつもの悲鳴とともに、爆風で海賊たちを海まで飛ばしていったのだった・・・
「あー、なんというかだな・・・今のはその、見なかったことにしよう」
 目を伏せる仙蔵に、5人が同時に突っ込んだ。
「「「「「――仙蔵っ!!!」」」」」
「わ、わるぎはなかったんだ、わるぎは」
わるぎでそんなことをされてたまるか、と後に仙蔵は同じ目にあって言うことになる。
 
**************

「行きはよいよい帰りが怖いの段」第2回でした。
ここまでおつきあいいただき、ありがとうございました!

今回の「行きは~」は、
この2回で終了になります。
が、このシリーズ自体は、まだ終わりません

次回からは、「6人そろえば、怖くない!?の段」になります。
よかったら、引き続きお付き合いください。

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