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トリブラに愛を注ぎつつ、私的おすすめ本の紹介や、読んだ本にまつわるssなど、思いつくままに・・・
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なんか続いちゃってます
落第忍者伊作」、略して「落・伊」

「お魚もらいにぼくらは行くの段」の第1回をお送りします。

今回は、伊作、・留三郎が、忍術学園を出発。
・・・するところで、1年い組の(笑)文次郎と仙蔵と出会っちゃったり・・・な感じかと。

では、よろしければ、以下、おつきあいください。

**************

「あーあ。今日はほんっと、お前と一緒にいてロクなことがない」
「私だって、好きで巻き込まれてるわけじゃないぞ」
 魚を乗せる荷車を引きながら、伊作と留三郎はトボトボと学園の門のところまでやってきた。
 これから、第三共栄丸さんのところへ、お魚を取りに行くのである。
 しかし、半ば強制的なお遣いに、二人は少しばかり不機嫌だ。何しろ今日は、朝から何かと不運続きで、ゆっくりと休む暇もなかったのだから。
「せめて、あそこ安藤先生に会わなければなー。あんなイヤミも言われずにすんだし」
 留三郎がしみじみというと、伊作も苦笑いをしながらうなづいた。
「とめさぶろー、えらく怒ってたねぇ。私なんて、もう年中言われっぱなしで、いい加減慣れてきちゃったよ」
「慣れる!?そんなの絶対ムリだぞ!特に俺は、あそこで文次郎の名前を出してくるところが気にくわないッ」
「とめさぶろーは、文次郎とは犬猿の仲だからなぁ・・・」
まぁ、たぶん似たもの同士だからなんだろうけど、と心の中で伊作は付け加える。
そんな事を言い合っていると、ふと背後から声がした。


「何だ、お前たち。また補習させられてるのか」
振り返ってみると、近くの木の陰に、一人の生徒がもたれかかるように立っていた。
白い肌に、流れるような黒髪。それに、どこか人を見下ろしたような目。1年い組の立花仙蔵だった。
「せ、仙蔵ッ。お前こそ、こんなところでなにやってるんだよッ!」
 留三郎が、嫌なやつに会ったといわんばかりの表情で問いかけると、仙蔵は研究者じみた顔をして説明を始めた。
「いやなに、午後からこの木の陰で勉強でもしながら、学園に出入りする人間を観察しようと思ってね。この木の陰は、涼しくて快適な上に、門を出入りする人間からは発見されにくい。絶好の観察スポットというわけなのさ。
まっ、現にお前たちも、私のすぐ傍を通っておきながら、私の気配に全く気づかなかったようだしな」
どこか小ばかにしたような仙蔵の言い方にムッとして、留三郎と伊作は言い返した。
「きっ、気づかなかったわけじゃないやいッ!」
「そうだッ!気づいてたけど、気づきたくなかっただけだよっ!」
その伊作の言葉に、仙蔵は目を丸くした。
「・・・それは、どういうことだ、伊作?気づいてたが、気づきたくなかった?つまり、お前は私の気配に気づいていたと?」
「だだだって、目を合わせたら、今みたいにイヤミ言うだろ。そしたら、またとめさぶろーとケンカになっちゃって、結果的にまた私が不幸な目に・・・」
「・・・なんだか、よくわからんが、いろいろ大変なんだな、お前も。
――まぁ、いい。とにかく、補習の一貫で、またお使いなんだろ。さっさと行って来ないと、日が暮れるぞ」
そう言うと、仙蔵は二人に目もくれることなく、手にしていた教科書に目を落とした。どうやら、興味を失ったらしい。
「・・・なんか、よくわかんないけど、いこうか、とめさぶろー」
「あ、ああ」
しかし、二人が再び歩き始めると、今度は校舎の彼方から、なにやら叫び声が聞こえてきた。


ぎんぎーんッ!

二人が驚いて声のするほうへ目を向けると、猛スピードで、何かが二人に向かって突進してきた。その物体を確認すると、留三郎が表情を険しくなる。
「あ、あれはッ!」
まったくわき目も振らずただまっすぐに猛進する、その彼は・・・
「1年い組の潮江文次郎じゃないかッ!」
すると、彼方から猪のごとく突進してきた文次郎は、二人の前でブレーキ音の聞こえてきそうな急停止を披露した。そして、止まるや否や第一声に、のたまった。
「お前たち!こんなところにでっかい荷車なんて置いていたら、危ないだろうがッ!さっさとどっかへ移動させろ!・・・ん?」
盛大のたまっていた文次郎は、このときようやく、自分の前に立ちふさがったのがだれであったか気づいた。
「お前たちは、1年は組の伊作と留三郎。
はは~ん。さてはお前たち、また補習だな。今度はなーにをしでかしたんだ?ええ?」
 いかにも嫌味な口調で問いかける文次郎に、気の短い留三郎が早速キレた。
「お前には関係ないだろッ、文次郎!」
「そうやってごまかすところを見ると、どうやら図星のようだな。
お前たち、そんなんでホントに忍者になる気あるのか?1年生の時点で、すでにこの有様とはなぁ」
「ぬぬぬ・・・言わせておけば、コノヤロウッ。勝負だっ文次郎ッ!」
「やるか?留三郎!今日こそお前との決着をつけてやるっ!」
 言うなり、留三郎が文次郎につかみかかった。それを余裕で受け止める文次郎。こうして、二人の取っ組み合いのけんかが始まった。
 二人のけんかに、あわてたのは伊作である。ほうっておいても、ケンカが終わらないことはこれまでの経験から明らかなので、とめようと必死で二人の間に割って入る。
 しかし。
「ああああ二人とも、門の前でケンカなんてよそうよぉ・・・あうっ」


**************

「お魚もらいにぼくらは行くの段」(苦笑)第1話でした。
ここまでおつきあいいただき、ありがとうございました!
 

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