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トリブラに愛を注ぎつつ、私的おすすめ本の紹介や、読んだ本にまつわるssなど、思いつくままに・・・
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落第忍者伊作」、略して「落・伊」

「お魚もらいにぼくらは行くの段」の第3回をお送りします。

今回は、伊作、・留三郎の登場は少しお休み。
そのころ、忍術学園では・・・という感じで、
1年い組の文次郎と仙蔵や、1年ろ組の小平太と長次
が登場します。
あ、あと。
安藤先生(再び!)や、斜堂先生(初登場!)なんかも・・・。

では、よろしければ、以下、おつきあいください。





**************

一方、そのころ、忍術学園では。
「うむ、校門の前では、思いのほか人が通らなくて退屈だから、こっちに移動してみたが・・・
ここなら、廊下を行き交う生徒からも死角になっているから、存分に人間観察ができそうだな」
 1年い組の立花仙蔵は、忍たま長屋に続く長い廊下近くの茂みに、身を潜めていた。その目は鋭くあたりを捉えており、かつ、向上心にあふれる彼の手元には、忍たまのバイブルである『忍たまの友』がしっかりと握られている。
 相変わらず、忍者としての鍛錬には余念がないようだ。
「さて、次は誰が来るかな・・・おっと、あれは、1年は組担任の山田先生と土井先生だ」
 二人の先生の姿を廊下の端に見つけると、仙蔵は茂みに身を潜めた。何も知らない二人の先生は、なにやら話し込んでいる様子だった。
  「・・・それにしても、二人にあんなところまで行かせて、大丈夫でしょうか?」
  「まあ、兵庫第三共栄丸さんのところなら、大丈夫でしょう。
   向こうには、海賊さんもついていますからな」
 どうやら、お使いに行かせた伊作と留三郎のことを言っているらしい。
  「しかし、あの付近では最近、戦が頻発しています。噂によると、昨夜、城が一つ焼 け落ちたとか。その影響で、城の周りを残党があたりをうろついているようですし・・・」
 それを聞いた仙蔵は、
(うむ。まさかあの二人がそんなところに行っているとは・・・これは)
 何か閃いたようだ。
 彼は、茂みを飛び出すと、忍たま長屋の自分の部屋へかけ戻った。
 そして、バンッ!とふすまを開けるなり、第一声で。
「文次郎、海へ行こう!兵庫第三共栄丸さんのいる海へ!」
 と、叫んだ。
「・・・はあ?」
 部屋で勉強をしていた同室の文次郎は、突然のことでわけがわからない。
「急にどうしたんだ仙蔵。頭は元気か?」
 しかし、文次郎の問いかけを無視して、仙蔵は彼に詰め寄った。その表情は、いつになく好奇心にあふれている。普段はクールで冷静な彼も、こんな表情をすることがあるのか、とつい文次郎は感心してしまう。
「いいか、考えてもみろ文次郎。忍者の基本は実地訓練だ。実戦で活かすことができなければ、本で読んだ知識など、何の意味もない。
我々1年い組は確かに優秀だが、1つだけ決定的にかけているものがある。それは、実地訓練だ。
その点、は組の連中は、いつもいろいろと面倒事に巻き込まれているから、実戦に強い。
だから我々も、経験を積みにゆくのだ」
「・・・よくわからんが、仙蔵。俺たちはまだ1年生だ。そういうのは、もっといろんなことを勉強してからでもいいんじゃないのか」
 確かに、もっともである。
 しかし、文次郎の良識的かつ常識的な発言など全く耳に入っていない仙蔵は、勉強に勤しむ文次郎の肩を強引につかむと、
「さあ何をしているんだ、文次郎!早くいくぞ!」
 と、のたまった。
「いい・・・行くぞって、仙蔵・・・外出許可はどうするんだ?」
「それなら心配はいらない。外出許可証なら、もうとってあるッ!」
ジャーンッ!
 仙蔵は、懐から外出許可証を2枚取り出した。その用意周到さに、おもわず文次郎は感嘆の声を上げる。
「おおッ、さすがは仙蔵!・・・って、なんで俺の分までとってあるんだ!?」
 しかし、文次郎のもっともなツッコミをさらりと無視して、仙蔵は文次郎に見せびらかすように、大袈裟な動作で人差し指を前方に突き出した。
「さあ、ゆくぞ文次郎!目指すは兵庫第三共栄丸さんのいる海だ!」
 その言いようは、まるで彼の指差す先に海があるかのような錯覚を、文次郎に引き起こした。
「・・・おい、何だかわからんが、その兵庫第三共栄丸さんって、一体誰なんだ!?」
 しかし、もはや文次郎の叫びなど全く聞く由もなく、仙蔵は文次郎を引っ張って、安藤先生の部屋まで連れて行ったのだった。
 
 
ななななんですとッ!?
君たちも、兵庫第三共栄丸さんのところへ、新鮮なお魚を取りに行きたいですって!?」
 仙蔵の話を聞くと、1年1組担当の安藤先生は、「1年は組が全員100点を取ったですとッ!?」とでも言い出しそうな顔で大袈裟に驚いてみせた。
 しかし、安藤先生の驚きぶりに対して、仙蔵はマイペースなまでの落ち着きぶりを保って言った。
「お言葉ですが安藤先生、忍者の基本は実地訓練です。こういう些細なことを通じて、忍者は経験を積んでいくものと思いますので」
「その心がけは立派ですが、立花仙蔵くん。なにも、は組の真似をしなくても・・・」
「別に真似をしているつもりはありません。これも、れっきとした忍者としての訓練ですので。
――それでは、私の文次郎は、これから海に行ってきます。
では、失礼します」
言いたいことだけ言うと、仙蔵はスタスタと部屋を出て行ってしまった。
「あああ君たちッ、一体どこへ行くんですか?まだ私は、外出許可を出した覚えをありませんよッ!?」
 しかし、止めようとする安藤先生の目の前で、二枚の紙が舞った。仙蔵が残していったものらしい。安藤先生が紙を手に取ってみると。
「ややっ、これは外出許可証じゃないですか。一体いつの間に!?」
抜け目のなさでは、安藤先生をも上回る仙蔵だった。
 
 
――そしてもう一方。
 先刻の土井先生と山田先生の会話を聞いていた者が、もう一人いた。
 それは・・・
「ぼそぼそ」
「ん?なに?なにか言ったか長次?」
 1年ろ組の中在家長次である。
 彼は、廊下に立ち止まったまま、何かを呟いていた。
 実のところ彼は、二人の先生が件の話をしていた時、偶然後ろを歩いていた。しかし、普段から暗く、存在感が薄いため、誰にも気づかれなかったらしい。
・・・・もっとも、彼の後ろを歩くクラスメートの七松小平太だけは、別だったようだが。
「ん?どうかしたか、長次?」
小平太の存在に気付くと、長次は振り返り、彼に向って何かを言い始めた。
「ぼそぼそぼそぼそ・・・」
「ん?なになに。先生たちはさっき、本当のことは“矢羽音”で話してたって?
へえ~。長次はまだ1年生なのに、スゴいなぁ。
・・・・で、“矢羽音”ってなに?」
明るく問いかける小平太の手を、突然長次は、無言でぱしっと掴んだ。そして。
行こう、小平太
「行くってどこへ?」
やはり明るく問いかける小平太。
兵庫第三共栄丸さんのいる海へ
「へえ~海か~おもしろそー。行こ行こ~」
 突然のことにもかかわらず、普段から細かいことは気にしない小平太は、すっかり乗り気だ。

 
 門へ向かう彼らは、廊下で一人の先生とすれ違った。
 暗く、どんよりとした雰囲気を醸し出す、この先生は、二人の所属する1年ろ組の教科担当、斜堂影麿先生だった。
 斜堂先生は、門へ向かう二人の姿を見つけると、ぎょっとした様子で二人を呼び止めた。
「あああッどこへ行くんですか、中在家長次くんと七松小平太くん・・・ッ。1年ろ組は、これから野外ピクニックですよ・・・」
 すると、斜堂先生と瓜二つの口調で、長次が答える。
ちょっと・・・町までおつかいに・・・
「おもしろそーなんで、僕も一緒にいってきまーす」
 ぼそりと小声で言う長次に、便乗して小平太も手を挙げる。そして。
では。行ってきます
 一礼すると、スタスタと去っていく二人に、斜堂先生は慌てて声をかける。
「おつかい?ど、どういうことですか?そんなの聞いてませんよ!?だいたい、外出届が・・・」
 すると、斜堂先生の前で、2枚の紙が舞った。
「こ、これは、外出届・・・それも2人分・・・いつの間に」
 やはり、中在家長次も、抜け目のなさでは引けを取らないようだ。


**************

「お魚もらいにぼくらは行くの段」(汗)第3話でした。
ここまでおつきあいいただき、ありがとうございました!
 
「お魚~」は今回で終わり。
次回からは、
「行きはよいよい帰りは怖いの段」になります。

よかったら、またお付き合いください

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