トリブラに愛を注ぎつつ、私的おすすめ本の紹介や、読んだ本にまつわるssなど、思いつくままに・・・
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相変わらず、続いてます、忍たまブーム
9月に入り、再びアニメの新作放送が始まったので、うれしい限りですw
さて。
先日放送した「気持ちよく泣かせての段」なんですが。
ちょっと期待してました、大好きな6は組の二人の登場。
実際には、出てきたのは斜堂先生でしたが
そこで、
「気持ちよく泣かせての段」で、
きり丸の前に現れたのが、斜堂先生ではなく、6は組の二人だったら。
という妄想を、書いてみてしまいました。
もちろん、6年生も総出演
と、いうわけで、以下、もしよろしければお付き合いくださいませ~
9月に入り、再びアニメの新作放送が始まったので、うれしい限りですw
さて。
先日放送した「気持ちよく泣かせての段」なんですが。
ちょっと期待してました、大好きな6は組の二人の登場。
実際には、出てきたのは斜堂先生でしたが
そこで、
「気持ちよく泣かせての段」で、
きり丸の前に現れたのが、斜堂先生ではなく、6は組の二人だったら。
という妄想を、書いてみてしまいました。
もちろん、6年生も総出演
と、いうわけで、以下、もしよろしければお付き合いくださいませ~
(妄想)「気持ちよく泣かせての段」
【あらすじ】
きり丸は困っていた。次のバイトに行く時間になっても、子守のバイトを頼んだ親が引き取りに来ないのだ。
しかし、一年は組はみんな留守で、誰か頼める人がいないかとさがしていたところ…
***********
「困ったな。誰かいないかなぁ…」
きり丸が辺りを見回していると。
「あっ、あれは」
前方から、二人の上級生がやってくるのが見えた。
「あれは、6年は組の善法寺伊作先輩と、食満留三郎先輩だ。そうだ、あの二人に頼もう」
思い立ったら即行動。きり丸は、二人のもとへ駆け寄った。
「先輩~」
「きり丸。どうしたんだ、そんなに慌てて」
「実は、かくかくしかじかで」
「なるほど、アルバイトの手伝いをさがしているんだな」
伊作のあまりの飲み込みの早さに、傍らで留三郎が、「文章は便利だな」とつぶやく。
「そうなんです。そこで、伊作先輩、食満先輩。僕の代わりに子守のアルバイト、お願いします」
すると、伊作は顔を曇らせた。
「お願いしますと言われてもなぁ。子守なんて、やったことないし」
「伊作先輩、そう言わず、お願いしますよぉ。
あぁそうだ。今度、保険委員会で使う薬草のよく採れるところ、教えますから」
「たっ確かに、それはありがたいが…」
薬草という言葉に、伊作の心が一瞬動いたのを、きり丸は見逃さなかった。すかさず、伊作に赤ん坊をわたし、
「じゃ、そういうことで。先輩、あとはよろしくお願いします」
そう言って、さっさと走り去っていってしまった。
「あ、ちょっと、きり丸…行っちゃった」
きり丸に逃げられてしまい、伊作は困った顔を留三郎に向けた。
「どうしよう、留三郎」
「どうしようと言われてもなぁ…とりあえず、部屋に連れて行くか」
そして、二人は、赤ん坊を連れて忍たま長屋の自室に戻ってきた。
がー
「で、さっきから泣き止まないんだが、どうしたらいいんだ、伊作?」
すっかりお手上げといった様子で、留三郎が言った。
だが、それは伊作も同じのようだ。
「わからん。赤ん坊は、泣く事が仕事だというしな。せっかくだから、このまま気持ちよく泣かせておこう」
そこで、二人は、赤ん坊が泣くに任せることにした。
ところが、数分後。
「伊作、留三郎!」
障子が勢いよくどんっ!と音をたてて開かれ、6年い組の潮江文次郎が、つかつかと部屋に入ってきた。
「文次郎、どうした」
留三郎が驚いて問うと。
「どうしたじゃない。何だこの叫び声は。うるさくて勉強に集中できんではないか」
かなりお怒りのようだ。
「あぁごめん、やっぱり迷惑だったかな」
伊作が謝ると、文次郎は、赤ん坊を指差して言った。
「そもそも、なんでこんなところに赤ん坊がいるんだ。ここは忍たま長屋だぞ」
「あぁ。これは、実はきりまー」
「いや待て、皆まで言うな。どうせお前たちのことだ。またどこかの城の戦にでも首をつっこんで、面倒なことに巻き込まれたのだろう」
「あぁ、いや、そうじゃなくて文次郎、これは…」
「さしずめ、どこぞの城の城主から、
“我々はもうだめだ。伊作くん、せめてこの子だけは、何とか逃がしてやってはくれないか。お願いだ。もはや頼めるのは、君しかいないんだ”
とか言われて、断れなかったんだろう。
ヘタレでお人よしのお前らしいじゃないか、伊作」
「いや、だから…」
さすがは、“学園一ギンギンに忍者している男”。想像も随分と忍者している。
「で?こいつはどこの城のやつだ?例のタソガレドキ城か?あるいは、タソガレドキと戦中のオーマガトキか、チャミダレアミタケか…」
文次郎の勝手な想像に、伊作が苦笑いしていると。
「おい、全然泣き声が止まないではないか」
また障子が開いて、文次郎と同室の6年い組立花仙蔵が入ってきた。
「仙蔵。お前までどうした」
留三郎が問うと。
「泣き声がうるさいと言いに行ったっきり文次郎が帰って来ないから、様子を見に来たんだ。
文次郎のことだから、留三郎と喧嘩にでもなっているのではないかと思ってな」
そう言うと、仙蔵は部屋の中をぐるりと見回した。たまたま、赤ん坊と目があった。
「あっ仙蔵、もしかして、君ならこの赤ん坊を泣き止ませることができるか?」
伊作は、ふと思い付いてそう言うと、仙蔵に赤ん坊を渡した。
「うむ。赤ん坊の世話などやったことはないが、やってみよう」
そして、仙蔵が赤ん坊を揺らすと…
「おぉ、泣き声が小さくなった」
「なかなかうまいじゃないか。さすが仙蔵」
「当たり前だ。これくらい、たいしたことではない」
しかし、それも長くは続かず、じきに赤ん坊は再び泣き出してしまった。
「あ、また泣き出した」
「やはり、私では無理だ。文次郎、任せた」
「任せたって、おい…」
仙蔵は、あっさりあきらめて赤ん坊を文次郎に託すと、さっさと部屋を出ていってしまった。
急に渡されて困った文次郎は、赤ん坊をあやそうと必死に尽くした。
「おーいい子だー泣き止めー」
しまいには、あばばーなどと赤ちゃん言葉まで言い出したが…。
「なんか、さっきより泣き声が大きくなってないか?」
「な…なぜだ。俺はこんなに真剣にやっているというのに」
すると、横から留三郎が、文次郎を挑発するように言った。
「文次郎、きっとお前の顔が怖いんだ」
「何を言うか留三郎。そもそも、こんなうるさい赤ん坊を持ち込んだのは、お前の方だろうが」
「何を、文次郎。勝負だ!」
「望むところだ!ギンギーンっ!」
「あーもぅ、二人とも。赤ちゃんの前で喧嘩はよせ」
伊作の忠告も、こうなった二人には届きそうにない。
と、その時。
「うるさい、静かにしないか」
「長次」
また障子が開き、6年ろ組の中在家長次が入ってきた。さらに。
「何だ?なんか面白い事でもやってるのか」
「小平太まで」
長次と同室の七松小平太までもが、つかつかと部屋に上がり込んできた。
「どうしたんだ、二人して」
留三郎が問うと。
「泣き声だけでもうるさいのに、文次郎と留三郎が喧嘩まで始めたので、とめにきた」
「それは、何と言うか…」
「すまなかったな」
長次の言葉に、文次郎と留三郎が、そろって頭を下げる。
「ところで伊作、その赤ん坊は何だ」
「あ、あぁ。この子は、きり丸のアルバイトの手伝いで、子守を頼まれたんだ」
「なに、きり丸の」
長次の眉がピクリと動いた。
「まぁ、正確に言うと、押し付けられたんだがな」
「かしてみろ、ボソ」
「え?うん。
さっきから泣き止まなくって、困ってたんだ」
伊作が長次に赤ん坊を渡すと、急に赤ん坊がピタリと泣き止んだ。そして
じー
長次の方をじっと見つめ始めた。
「な、泣き止んだぞ」
留三郎が驚いて声を上げる。
じー
長次と赤ん坊の見つめあいはなおも続く。…しかし。
にたぁっ
長次が、ふと笑った瞬間。
「おぎゃーっ!」
「また泣き出した」
「っていうか、さっきよりさらに泣き声がひどくなってないか?」
無理もない。何しろ、中在家長次の笑顔はひどく不気味なのだから。
…もっとも、本人は気付いていないようだが。
すると。
「ダメだなぁ、みんな。私に任せろ」
「え?小平太?」
小平太は、ひょいと長次から赤ん坊を奪うと。
「ほーれ、高い高ーい」
「おぉっ!さっきまであんなに泣いていた赤ん坊が、ピタリと泣き止んだ」
「いや、それだけじゃない」
「笑ってる」
「いい笑顔だ」
「やはり、赤ん坊はこうでなくてはな」
5人が、赤ん坊の笑顔にまったりしていると。
「高い高ーいの、くるくるーの、宙返り!」
突然、小平太が赤ん坊を空高く投げた。
本人は、ちょっと投げただけのつもりのようだが、普段から獣並みといわれる程の有り余る体力の持ち主に、一般人の“ちょっと”など通用するはずもなく。
「いけいけどんどーん。さぁ月面着陸だぞっ!まっすぐ私のところに下りてこーい、赤ん坊!」
「下りてこいって、どれだけ高く飛ばしてるんだ、小平太!」
慌てて伊作と留三郎が飛び出す。
「あぁ、危ないっ」
ゴンッ
慌てた留三郎と伊作がぶつかり、赤ん坊はというと、何事もなかったかのように、小平太のもとへ着地した。
「小平太…赤ん坊だぞ、もっと丁寧に扱え!」
文次郎が言った。
「いいじゃないか。この子もこんなに喜んでるし」
「だが、少し危険過ぎると思う、ボソ」
次いで長次が言った。
「そうだ小平太。赤ん坊だから、もっと丁寧に」
「赤ん坊にはやはり笑顔…あはぁ」
長次が再び笑顔を披露するが、もちろん、
「また泣き出した」
「長次、お前のせいだぞ」
「なぜ私のせいなんだ」
「いや、それは…」
「とにかく、赤ん坊の面倒は俺がみる」
「いや私が」
「私がみるボソ」
文次郎と長次と小平太がモメ始めた。
「…おいおい。なんでいつの間にか、誰が赤ん坊の面倒をみるかっていう話になってるんだよ?」
留三郎がツッコむも、もはや三人には聞こえていない。すると…
「…もう、全員とっとと部屋から出ていってくれーっ!」
伊作の渾身の一言に、ようやく三人は我に返り、しゅんとして部屋を出ていったのだった。
三人が出て行き、ようやく部屋に平穏が取り戻された。
「ふう。ようやく静かになった」
「しかし伊作。赤ん坊は相変わらず泣き止まないぞ。どうするんだ」
「うーん、そうだなぁ…」
伊作と留三郎は考えこんだ。
「そもそも、なんでこの部屋にきた途端、泣き出したんだ?何かこの部屋に悪いものでも?確かに、伊作が薬を煎じるせいで、部屋に異様な臭いが染み付いているが…
ん?そうか!」
「何かわかったのかい、留三郎」
伊作の問いに、留三郎は「ああ」と強くうなづいた。
そして。
「ここなら大丈夫だな」
「うん、赤ちゃんも泣き止んだし。医務室なら、いざという時の応急処置もできるから安心だ」
そう、二人は医務室にいた。なぜなら…
「しかし、骨格標本のコーちゃんが原因とは、うっかりしていたなぁ」
「あぁ。俺たちは、普段から見慣れているからな。やっぱり、そういうところに、落とし穴ってのはあるもんだな」
つまり、赤ん坊が泣き止まない原因は、二人の部屋に置かれた骨格標本にあったのだ。
骨格標本のコーちゃん。
忍び服を来たガイコツで、保険委員長を務める伊作の私物である。
確かに、ガイコツの忍者と一緒では、赤ん坊も落ち着かないだろう。
ともあれ、ようやく泣き止んだ赤ん坊に、二人がホッと一息ついていると。
「あれ?善法寺伊作先輩に、食満留三郎先輩じゃないですか」
「二人して、こんなところでどうしたんですか」
乱太郎としんベヱが、医務室にやってきた。伊作が早速事情を話し始める。
「実は…」
「それは、きりちゃんがご迷惑をおかけしました」
事情を聞くと、乱太郎が申し訳なさそうに頭を下げた。
「いや、いいんだよ。もう赤ちゃんも寝ちゃったみたいだし」
伊作が笑って言う。
「ほんとだー。ぐっすり寝てる」
「こうやってみると、けっこうかわいい顔をしているんだがな」
「全くだ。やっぱり、赤ちゃんは寝顔が一番だな」
赤ん坊の寝顔を覗き込んで、留三郎と伊作がしみじみ言った。
と、その時。
「すみませーん。遅くなりました」
外で、女性の声がした。
「あっ、もしかして」
どうやら、ようやく迎えが来たようだ。
「すっかり遅くなりまして、ご迷惑をおかけしました」
赤ん坊の母親は、伊作と留三郎に、丁寧に頭を下げた。
「いえいえ。今はぐっすり寝てますし」
伊作がそう言って、赤ん坊を手渡す。赤ん坊の寝顔を見て、母親も頷いた。
「おや、本当だ。まぁ幸せそうな顔をして。きっと、たくさん遊んで満足したんでしょうね」
すると、赤ん坊が突然寝言を言い出した。
「ぎんぎん…」
「…え?」
「もそもそ…しょうぶだぁ…いけいけどんどーん」
「…これは、もしかして、俺たちの…?」
赤ん坊の言わんとすることに気付いて、留三郎がギクリとした。しかし、母親は全く気づかず、
「まぁ何かしら。また新しい言葉を覚えたのね。この子は本当に、何でも覚えが早いんだから。将来が楽しみだわ。
さぁ、早くお家に帰りましょう」
と上機嫌で言って、帰って行ったのだった。
「伊作…あれは…」
「…見なかったことにしよう」
去りゆく母の腕の中で、赤ちゃんが笑った気がした。
**************
はい、終了です。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
10分アニメを意識して、無理矢理オチ(?)までつけてみました。
来週は、6は組が登場してくれたらうれしいなぁ…。
【あらすじ】
きり丸は困っていた。次のバイトに行く時間になっても、子守のバイトを頼んだ親が引き取りに来ないのだ。
しかし、一年は組はみんな留守で、誰か頼める人がいないかとさがしていたところ…
***********
「困ったな。誰かいないかなぁ…」
きり丸が辺りを見回していると。
「あっ、あれは」
前方から、二人の上級生がやってくるのが見えた。
「あれは、6年は組の善法寺伊作先輩と、食満留三郎先輩だ。そうだ、あの二人に頼もう」
思い立ったら即行動。きり丸は、二人のもとへ駆け寄った。
「先輩~」
「きり丸。どうしたんだ、そんなに慌てて」
「実は、かくかくしかじかで」
「なるほど、アルバイトの手伝いをさがしているんだな」
伊作のあまりの飲み込みの早さに、傍らで留三郎が、「文章は便利だな」とつぶやく。
「そうなんです。そこで、伊作先輩、食満先輩。僕の代わりに子守のアルバイト、お願いします」
すると、伊作は顔を曇らせた。
「お願いしますと言われてもなぁ。子守なんて、やったことないし」
「伊作先輩、そう言わず、お願いしますよぉ。
あぁそうだ。今度、保険委員会で使う薬草のよく採れるところ、教えますから」
「たっ確かに、それはありがたいが…」
薬草という言葉に、伊作の心が一瞬動いたのを、きり丸は見逃さなかった。すかさず、伊作に赤ん坊をわたし、
「じゃ、そういうことで。先輩、あとはよろしくお願いします」
そう言って、さっさと走り去っていってしまった。
「あ、ちょっと、きり丸…行っちゃった」
きり丸に逃げられてしまい、伊作は困った顔を留三郎に向けた。
「どうしよう、留三郎」
「どうしようと言われてもなぁ…とりあえず、部屋に連れて行くか」
そして、二人は、赤ん坊を連れて忍たま長屋の自室に戻ってきた。
がー
「で、さっきから泣き止まないんだが、どうしたらいいんだ、伊作?」
すっかりお手上げといった様子で、留三郎が言った。
だが、それは伊作も同じのようだ。
「わからん。赤ん坊は、泣く事が仕事だというしな。せっかくだから、このまま気持ちよく泣かせておこう」
そこで、二人は、赤ん坊が泣くに任せることにした。
ところが、数分後。
「伊作、留三郎!」
障子が勢いよくどんっ!と音をたてて開かれ、6年い組の潮江文次郎が、つかつかと部屋に入ってきた。
「文次郎、どうした」
留三郎が驚いて問うと。
「どうしたじゃない。何だこの叫び声は。うるさくて勉強に集中できんではないか」
かなりお怒りのようだ。
「あぁごめん、やっぱり迷惑だったかな」
伊作が謝ると、文次郎は、赤ん坊を指差して言った。
「そもそも、なんでこんなところに赤ん坊がいるんだ。ここは忍たま長屋だぞ」
「あぁ。これは、実はきりまー」
「いや待て、皆まで言うな。どうせお前たちのことだ。またどこかの城の戦にでも首をつっこんで、面倒なことに巻き込まれたのだろう」
「あぁ、いや、そうじゃなくて文次郎、これは…」
「さしずめ、どこぞの城の城主から、
“我々はもうだめだ。伊作くん、せめてこの子だけは、何とか逃がしてやってはくれないか。お願いだ。もはや頼めるのは、君しかいないんだ”
とか言われて、断れなかったんだろう。
ヘタレでお人よしのお前らしいじゃないか、伊作」
「いや、だから…」
さすがは、“学園一ギンギンに忍者している男”。想像も随分と忍者している。
「で?こいつはどこの城のやつだ?例のタソガレドキ城か?あるいは、タソガレドキと戦中のオーマガトキか、チャミダレアミタケか…」
文次郎の勝手な想像に、伊作が苦笑いしていると。
「おい、全然泣き声が止まないではないか」
また障子が開いて、文次郎と同室の6年い組立花仙蔵が入ってきた。
「仙蔵。お前までどうした」
留三郎が問うと。
「泣き声がうるさいと言いに行ったっきり文次郎が帰って来ないから、様子を見に来たんだ。
文次郎のことだから、留三郎と喧嘩にでもなっているのではないかと思ってな」
そう言うと、仙蔵は部屋の中をぐるりと見回した。たまたま、赤ん坊と目があった。
「あっ仙蔵、もしかして、君ならこの赤ん坊を泣き止ませることができるか?」
伊作は、ふと思い付いてそう言うと、仙蔵に赤ん坊を渡した。
「うむ。赤ん坊の世話などやったことはないが、やってみよう」
そして、仙蔵が赤ん坊を揺らすと…
「おぉ、泣き声が小さくなった」
「なかなかうまいじゃないか。さすが仙蔵」
「当たり前だ。これくらい、たいしたことではない」
しかし、それも長くは続かず、じきに赤ん坊は再び泣き出してしまった。
「あ、また泣き出した」
「やはり、私では無理だ。文次郎、任せた」
「任せたって、おい…」
仙蔵は、あっさりあきらめて赤ん坊を文次郎に託すと、さっさと部屋を出ていってしまった。
急に渡されて困った文次郎は、赤ん坊をあやそうと必死に尽くした。
「おーいい子だー泣き止めー」
しまいには、あばばーなどと赤ちゃん言葉まで言い出したが…。
「なんか、さっきより泣き声が大きくなってないか?」
「な…なぜだ。俺はこんなに真剣にやっているというのに」
すると、横から留三郎が、文次郎を挑発するように言った。
「文次郎、きっとお前の顔が怖いんだ」
「何を言うか留三郎。そもそも、こんなうるさい赤ん坊を持ち込んだのは、お前の方だろうが」
「何を、文次郎。勝負だ!」
「望むところだ!ギンギーンっ!」
「あーもぅ、二人とも。赤ちゃんの前で喧嘩はよせ」
伊作の忠告も、こうなった二人には届きそうにない。
と、その時。
「うるさい、静かにしないか」
「長次」
また障子が開き、6年ろ組の中在家長次が入ってきた。さらに。
「何だ?なんか面白い事でもやってるのか」
「小平太まで」
長次と同室の七松小平太までもが、つかつかと部屋に上がり込んできた。
「どうしたんだ、二人して」
留三郎が問うと。
「泣き声だけでもうるさいのに、文次郎と留三郎が喧嘩まで始めたので、とめにきた」
「それは、何と言うか…」
「すまなかったな」
長次の言葉に、文次郎と留三郎が、そろって頭を下げる。
「ところで伊作、その赤ん坊は何だ」
「あ、あぁ。この子は、きり丸のアルバイトの手伝いで、子守を頼まれたんだ」
「なに、きり丸の」
長次の眉がピクリと動いた。
「まぁ、正確に言うと、押し付けられたんだがな」
「かしてみろ、ボソ」
「え?うん。
さっきから泣き止まなくって、困ってたんだ」
伊作が長次に赤ん坊を渡すと、急に赤ん坊がピタリと泣き止んだ。そして
じー
長次の方をじっと見つめ始めた。
「な、泣き止んだぞ」
留三郎が驚いて声を上げる。
じー
長次と赤ん坊の見つめあいはなおも続く。…しかし。
にたぁっ
長次が、ふと笑った瞬間。
「おぎゃーっ!」
「また泣き出した」
「っていうか、さっきよりさらに泣き声がひどくなってないか?」
無理もない。何しろ、中在家長次の笑顔はひどく不気味なのだから。
…もっとも、本人は気付いていないようだが。
すると。
「ダメだなぁ、みんな。私に任せろ」
「え?小平太?」
小平太は、ひょいと長次から赤ん坊を奪うと。
「ほーれ、高い高ーい」
「おぉっ!さっきまであんなに泣いていた赤ん坊が、ピタリと泣き止んだ」
「いや、それだけじゃない」
「笑ってる」
「いい笑顔だ」
「やはり、赤ん坊はこうでなくてはな」
5人が、赤ん坊の笑顔にまったりしていると。
「高い高ーいの、くるくるーの、宙返り!」
突然、小平太が赤ん坊を空高く投げた。
本人は、ちょっと投げただけのつもりのようだが、普段から獣並みといわれる程の有り余る体力の持ち主に、一般人の“ちょっと”など通用するはずもなく。
「いけいけどんどーん。さぁ月面着陸だぞっ!まっすぐ私のところに下りてこーい、赤ん坊!」
「下りてこいって、どれだけ高く飛ばしてるんだ、小平太!」
慌てて伊作と留三郎が飛び出す。
「あぁ、危ないっ」
ゴンッ
慌てた留三郎と伊作がぶつかり、赤ん坊はというと、何事もなかったかのように、小平太のもとへ着地した。
「小平太…赤ん坊だぞ、もっと丁寧に扱え!」
文次郎が言った。
「いいじゃないか。この子もこんなに喜んでるし」
「だが、少し危険過ぎると思う、ボソ」
次いで長次が言った。
「そうだ小平太。赤ん坊だから、もっと丁寧に」
「赤ん坊にはやはり笑顔…あはぁ」
長次が再び笑顔を披露するが、もちろん、
「また泣き出した」
「長次、お前のせいだぞ」
「なぜ私のせいなんだ」
「いや、それは…」
「とにかく、赤ん坊の面倒は俺がみる」
「いや私が」
「私がみるボソ」
文次郎と長次と小平太がモメ始めた。
「…おいおい。なんでいつの間にか、誰が赤ん坊の面倒をみるかっていう話になってるんだよ?」
留三郎がツッコむも、もはや三人には聞こえていない。すると…
「…もう、全員とっとと部屋から出ていってくれーっ!」
伊作の渾身の一言に、ようやく三人は我に返り、しゅんとして部屋を出ていったのだった。
三人が出て行き、ようやく部屋に平穏が取り戻された。
「ふう。ようやく静かになった」
「しかし伊作。赤ん坊は相変わらず泣き止まないぞ。どうするんだ」
「うーん、そうだなぁ…」
伊作と留三郎は考えこんだ。
「そもそも、なんでこの部屋にきた途端、泣き出したんだ?何かこの部屋に悪いものでも?確かに、伊作が薬を煎じるせいで、部屋に異様な臭いが染み付いているが…
ん?そうか!」
「何かわかったのかい、留三郎」
伊作の問いに、留三郎は「ああ」と強くうなづいた。
そして。
「ここなら大丈夫だな」
「うん、赤ちゃんも泣き止んだし。医務室なら、いざという時の応急処置もできるから安心だ」
そう、二人は医務室にいた。なぜなら…
「しかし、骨格標本のコーちゃんが原因とは、うっかりしていたなぁ」
「あぁ。俺たちは、普段から見慣れているからな。やっぱり、そういうところに、落とし穴ってのはあるもんだな」
つまり、赤ん坊が泣き止まない原因は、二人の部屋に置かれた骨格標本にあったのだ。
骨格標本のコーちゃん。
忍び服を来たガイコツで、保険委員長を務める伊作の私物である。
確かに、ガイコツの忍者と一緒では、赤ん坊も落ち着かないだろう。
ともあれ、ようやく泣き止んだ赤ん坊に、二人がホッと一息ついていると。
「あれ?善法寺伊作先輩に、食満留三郎先輩じゃないですか」
「二人して、こんなところでどうしたんですか」
乱太郎としんベヱが、医務室にやってきた。伊作が早速事情を話し始める。
「実は…」
「それは、きりちゃんがご迷惑をおかけしました」
事情を聞くと、乱太郎が申し訳なさそうに頭を下げた。
「いや、いいんだよ。もう赤ちゃんも寝ちゃったみたいだし」
伊作が笑って言う。
「ほんとだー。ぐっすり寝てる」
「こうやってみると、けっこうかわいい顔をしているんだがな」
「全くだ。やっぱり、赤ちゃんは寝顔が一番だな」
赤ん坊の寝顔を覗き込んで、留三郎と伊作がしみじみ言った。
と、その時。
「すみませーん。遅くなりました」
外で、女性の声がした。
「あっ、もしかして」
どうやら、ようやく迎えが来たようだ。
「すっかり遅くなりまして、ご迷惑をおかけしました」
赤ん坊の母親は、伊作と留三郎に、丁寧に頭を下げた。
「いえいえ。今はぐっすり寝てますし」
伊作がそう言って、赤ん坊を手渡す。赤ん坊の寝顔を見て、母親も頷いた。
「おや、本当だ。まぁ幸せそうな顔をして。きっと、たくさん遊んで満足したんでしょうね」
すると、赤ん坊が突然寝言を言い出した。
「ぎんぎん…」
「…え?」
「もそもそ…しょうぶだぁ…いけいけどんどーん」
「…これは、もしかして、俺たちの…?」
赤ん坊の言わんとすることに気付いて、留三郎がギクリとした。しかし、母親は全く気づかず、
「まぁ何かしら。また新しい言葉を覚えたのね。この子は本当に、何でも覚えが早いんだから。将来が楽しみだわ。
さぁ、早くお家に帰りましょう」
と上機嫌で言って、帰って行ったのだった。
「伊作…あれは…」
「…見なかったことにしよう」
去りゆく母の腕の中で、赤ちゃんが笑った気がした。
**************
はい、終了です。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
10分アニメを意識して、無理矢理オチ(?)までつけてみました。
来週は、6は組が登場してくれたらうれしいなぁ…。
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